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第34話 夜のとばりが訪れて

last update 最終更新日: 2025-06-11 06:50:48

 ……私達は疲れていたからか、はたまた気分転換のためか何故か一斉に窓の外を眺めてしまう。

 するといつのまにかすっかり日は沈み、漆黒の闇に三日月がぼんやりと輝く姿が見えたのだ。

 そう、夜のとばりが訪れたのである……。

「……あ、ああっ!」

「ど、どうしたのクロウ?」

 クロウの急な叫び声と、その何かを感じずにはいられない三日月夜に私は自身の胸の鼓動が早くなるのが分る。

「マ、マーガレットのいる場所にモンスターの気配が!」

「え、ええっ!」

「2人とも詳しい説明は後です! とりあえず私につかまって!」

「お願い!」

「了解じゃ!」

 クロウお得意の高速詠唱テレポートが完成し、私の視界がぐにゃりと歪むのを感じた!

 意識が戻り目の前を見ると、漆黒の闇夜に巨大な白い十字架が見える。

 屋根の上に飾られている十字架、即ち教会だろう。

 なんと驚いた事にその教会周囲から、大量の幼子の悲鳴、それに大量のモンスターが蠢く姿が見えるではないか!

 更によく目を凝らすと、黒装束に身を包んだ者達が鎧に身を包んだ骸骨兵らと戦っている姿が見える!

 黒装束らの腕は確かだったが、如何せん相手が悪い。

 というのもこの骸骨兵達はただのモンスターではない。

 リッチー=アガンドラが操る特殊なアンデッドモンスター竜牙兵なのである。

 竜牙兵、名の通りドラゴンの骨から生み出された強靭な力を持つスケルトン……。

 粉々にあるいは真っ二つに切っても、しばらくしたら何事も無かったように元の姿に戻ってしまう。

「ひ、ひいっ! 何だこいつらはっ!」

「ふ、不死身のバケモンだ……」

 その異様な姿に、黒装束の男らはついには悲鳴を上げる始末。

「クロウ! 小次狼さん!」

 私は腰に下げていたレッドニードルを素早く抜刀し、叫ぶ!

「了解じゃ! というか彼らは儂の部下じゃ!」

「なるほど、とりあえず私は後方で援護します!」

 2人もそれぞれ周囲を警戒しながら戦闘態勢に入る。

 なお、この竜牙兵達は倒すのに何種類か方法がある。

 それは……。

「燃えよ、レッドニードル!」

 私の命にて、私の胸のペンダントは真紅の輝きを放ち、それに呼応するようにレッドニードルの刀身は真紅の炎に包まれる!

「はあっ!」

 気合一閃!

 私は業火に包まれたレッドニードルで竜牙兵達を易々と切り裂いていく!

 切り裂かれた竜牙兵達はそのま
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